「何分改装中で散らかってますがどうぞ。」
彼は俺の荷物を持って玄関へ案内する。

「おじゃまします。きれいなペンションですね。」
などとお世辞を言いながら受付へ。
宿帳に書き込んでいると、キッチンから彼の声。

「ハーブティーが入りましたよ。
 リビングへどうぞ。」
「はーい。」
俺はリビングのソファに腰掛ける。
やっと落ち着いた感じがする。
窓から、真っ青な空と白樺の並木が風にそよいでいるのが見える。

「どちらから?」
「大阪からです。」
俺はハーブティーを啜りながら答えた。
「今回は大変でしたね。聞こえてました。」
「お恥ずかしい限りです。」
「いえ。そんなあくどい代理店があるんですねぇ。」
「言われてみればだまされる方がばかのようですが。」
「まぁ。ゆっくり3連休を楽しんで行って下さい。」
彼は不思議な笑みを浮かべながらハーブティーを啜っている。
俺は疲れたのか少し眠くなってきていた。
大きな欠伸が立て続けに3回。

「疲れたでしょう?部屋でもいいですし。
 私の他には誰もいませんから、
 ここのソファを使って頂いても結構ですよ。」
急激に襲ってきた睡魔に抗う術もなく俺はソファに横になる。
会心の笑みを浮かべる彼の様子など知る由もなく。

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