「当方では、このような内容のツアー企画は取り扱っておりませんが。
 それに、DTGMといった旅行代理店も存じません。」
「え?そんなぁ。」
「差し支えなければ経緯を伺えますか?」
「はぁ。DMでツアー企画の案内があって、それに応募したんですけど、
 1週間ほど前にその手紙と地図、チケットが送られて来たんです。
 で、今日の正午前にここに来るようにと。」
「そうですか。代理店の連絡先はご存じですか?」
「あっ。そう言えば、住所も電話番号も知りません。」
「たちの悪いいたずらか、詐欺商法ですかねぇ?」
いやな予感がばっちり当たってしまったって感じか。
俺は思いっきり溜息をつき、途方に暮れてしまった。

「このまま帰るのも癪ですし、今日泊まれる場所を探して頂けませんか?」
「はぁ。それが、あいにく行楽シーズンの3連休初日ですから
 どちらも予約で一杯なんです。申し訳ありませんが。」
「えぇ?一部屋もないんですか?」
「あいにく。」
これまた最悪のパターンである。
俺は、腹が立つやら情けないやら、自分の平和さ加減に愛想が尽きる。
その時、後ろから

「あのぅ。うちで良ければ一人くらいなんとかなりますよ。」
思わず振り返ると、ラグビーかアメフトでもしているかのような
身長180cmはありそうな兄ちゃんが、こちらを覗き込んでいる。
「え?」
「実は、うちもペンション経営してるんですけど、
 今改装中なんで、お客様はいらっしゃらないんです。
 3連休は工務店も休みで静かだと思いますし、
 部屋も全部改装してる訳じゃありませんから。
 お一人ならなんとかなると思うんですけど。
 お困りのようですから。」
助けに舟とはこのことだ。
「よろしいですか?」
俺は思わず微笑みながら握手を求めた。

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