俺は真っ暗なプールで1人泳いでいる。
夜中にこっそりプールに戻り、素っ裸で泳ぐのが好きだ。
部室の明かりがぼんやり零れている。
暗闇の中でチャプチャプ、水の音だけが響いていた。
近々、大会があるので、巽先輩からアドバイスしてもらったことを思い出しながら泳ぐ。
0.1秒でもタイムを縮める泳ぎが、今の俺には大切なんだ。
もう少しでインカレ選抜に残れるから。
巽先輩はインカレ選手で、さらに国体強化選手でもある。
そんな先輩のアドバイスは的確で、俺の欠点をズバリと指摘する。
昼間の俺は素直な後輩だ。当然、先輩にも敬語で接し、礼を欠くことはない。
夜は別だけどね。

そんなとき、部室の方で物音がした。俺は泳ぐのをやめて聞き耳を立てる。
部室から零れる明かりを背に人が立っていた。俺は少し緊張していた。

「誰だ?何をしている?」
なんだ巽先輩か。俺は先輩の声を確認して安堵した。
 「先輩。俺です。筧です。」
「ん?どうしたんだ?」
 「大会近いから調整してたんです。先輩のアドバイスを実践するために。」
「そっか。」
俺はプールサイドに腕を組み、顎を乗せていた。
先輩が俺の前にしゃがみ込む。

「感心だな。暗くないか?照明付けてやろうか?」
 「案外気持ちいいんですよ。暗い方が。」
先輩の視線が俺の裸の尻で止まる。

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