両の脚が小刻みに震える。

「男は初めてかい?」
俺の問いに黙って頷く。
しかし、下腹部に手をまわすと、そこは明らかに充血していた。

ワイングラスを静かに受け取り、窓辺に置いた。
彼の身体を反転させ唇を重ねる。
きつく目を瞑り、固く閉じられた唇は震えている。

やや薄めの下唇を俺の唇でそっとはさみ、優しく愛撫する。
緊張がほぐれるまでゆっくり優しく。
両肩に入った力を解すように柔らかく抱きしめる。
全身に漲った緊張が少しずつ少しずつ融解し始めた。
氷のかけらを舌の上で転がしたときのように。

舌を細めて唇の隙間に差し込んでみる。
少し開いた唇に俺の舌が迎え入れられ、彼の舌先と触れる。
暖かく柔らかい粘膜を絡め合う。
二人の手がお互いの腰の辺りを彷徨う。
溜息がこぼれそうなくらい長いキスを交わす。

薄目を明けた彼の瞳が仄かに潤んでいた。
間近で見る彼の瞳は憂いを帯びて美しいと思う。
恥じらいを含んだ微笑が新鮮で、彼を強く抱擁し呟いた。

「君を愛してしまいそうになる。
 迷惑だと分かっていても。
 ずっと一緒にいられたら。。。」
彼は少し困ったような顔をした。
目を細め小首を傾げる。
最初に出会ったときに感じた豊の面影はもうない。

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