香港の夜の街は生命力が発露していた。
赤や黄色を中心とした原色系の色彩が溢れ、
決して上品ではない記号が街を埋め尽くしている。
ジグソーパズルのピースをぶちまけたような雑多な感じ。

しかし、そこには生きることの本質が息づいているような気がした。
光りと色彩の洪水、車の騒音と振動、一陣の風が運ぶ埃っぽい空気、
溢れる音楽、街行く人々の笑顔、店先まで漏れ出す姦しい広東語の響き、
全てが生命力にあふれている。

俺は異国の街でJAZZにも似た不協和音に共鳴し、
生きることを投げやりになりかけていた自分が恥ずかしくなった。
本当に豊を愛していたのだろうか。
愛という言葉に酔っていただけではないのか。
愛することの見返りを求めていたのではないのか。
ただ、そこにあるだけで幸せであったはずなのに、
そこにいることを求めていたのではないのか。

今は心静かに事実をあるがままに受け入れることができるような気がした。
この街の雑然とした佇まいの中に潜む純粋さに心打たれながら
夢遊病者のようにふらふらと漂った。
香港の夜は深い。

***

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