Missing Link−最終話

2003年8月15日
ここに暁がいるのか。<Erth Hole>男専用の地下クラブのようだな。
俺は、薬に溺れた性の奴隷として振るまい、迎えの男達をうまく騙した。
潜入に成功といったところか。とりあえず、暁の居場所を探らなければ。

店の男達による品定めが終わり、俺はシャワーを浴びさせられるようだ。
昨日と同じように今夜から3回のステージに立たせるだと。
男どもに犯されるシーンを客に見せて金を取るのか。
その上、犬にまで。。。俺は、その内容の壮絶さに絶句した。

昨夜、暁はそんな目に合わせられていたのか。。。俺の比ではない。
怒りで全身が震えそうになるのを必死で我慢し、俺は惚けたように突っ立っていた。

シャワーを浴び、個室に放り込まれる。
途中の開け放たれた個室の中を覗いて、俺は小躍りして喜びそうになった。
暁がベッドで休んでいたのだ。
男達がバタバタと開店の準備に忙しい隙をついて、俺は暁の個室に滑り込む。
全く抵抗しないものと安心しきっているのが幸いした。

ドアを閉め、暁を揺すり起こす。
ゆっくり目を開け、俺を見つめるが、何の反応もない。

「おい。暁、しっかりしろ。俺だ、秀幸だ。」

俺は、必死に囁きかける。しかし、暁の目の焦点があっていない。
俺は、とりあえず、その辺の作業服を暁に着せ、俺も着込んだ。
抱えるように暁を連れ、トイレに向かう。
トイレの小さな窓から暁を押しだし、俺も外に出る。
幸いここは、1階で、建物の隙間を通れば路地裏に出ることができる。
暁を促し、路地裏に抜けた。

早く逃げようと暁を急かすが、緩慢な動作で要領を得ない。
俺は、暁を背負って走り出した。小石が足の裏に突き刺さるが構ってはいられない。
いずれ奴等は俺達がいないことに気が付くだろう。
そして、伊達のことも明るみに出ることだろう。
それまでに、一刻も早く、より遠くまで逃げなければ。
地下組織の人間に追われて逃げ切れるか心配になるが、
あんな所で、身体がボロボロになるまで嬲り続けられる訳にはいかない。
暁をそんな目に遭わせ続ける訳に。

もしかしたら、一生逃げなければならない羽目に陥るかもしれない。
だが、俺は暁を守ってみせる。暁を一生守り続けてみせる。
全てを失い、知らない土地でひっそりと暮らすことになるだろうが、
暁さえいてくれれば俺は構わない。
暁は元通りになるだろうか。それが心配だ。
もし、戻らないとしても、男に抱かれなければ我慢できないとしても、
その時は、俺が毎日でも抱いてやる。暁が満足するまで、一日中でも抱いてやる。

小石が食い込み、足裏が切れて血が滲みだしているのも構わず、
暁を背負ったまま、俺は走り続けた。
暁が、俺の横顔をぼんやりと眺めている。
そして、かぼそい声で呟いた。

 「んんん?秀くん急いでどこへ行くの?」

俺は、視界がぼやけ、街の灯が滲むのも構わず走り続けた。

         第13話 Missing Link 完

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