新入社員の憂鬱−29

2003年3月20日
 「高橋君、ちょっと。」
終業時刻が間近になって課長が俺を呼ぶ。
嫌な予感がする。

 「すまないが今日は残業してくれるかね?」
「はい。」
俺にはそう答えるしかないのだ。
就業のチャイムがなり、半時間もすると残ったのは課長と俺だけになった。

 「高橋君。レポートには目を通してくれたね?」
「はい。」
 「では、これから私と一緒に来てくれ。」
「どちらへ?」
 「来れば分かる。」
そう言い残すと、いつものアタッシュを持ってエレベーターホールへと向かう。
最上階が社長室なのだが、そのひとつ下の階へと降り立った。

ここは重役専用のフロアの筈だ。
課長は一番奥の部屋のセキュリティボックスにカードを差し込み暗証番号を入力した。
緑のランプが点灯し、カチリとロックが解除された。
なぜか部屋の中は薄暗い。部屋には既に8名がいる。

総務部総務課長と新入社員の山本、企画部企画第1課長と新入社員の田丸、
営業部営業第1課長と新入社員の崎山、第3課長と新入社員の清水だった。
そして、人事部人事課長と俺の計10名。
こいつらがプロジェクト要員ということか。

 「新入社員はそこに整列したまえ。」
人事課長が俺達に指示を出す。プロジェクトの最高責任者なのだろう。

 「それぞれの部署で本プロジェクトのレポートに目を通したことと思う。
 君たちは選ばれた人間であることを、まず最初に伝えておく。
 しかし、君たちにも選択の権利はある。
 そこで、本プロジェクトに参加したくないと考えるものは挙手したまえ。
 当然のことだが、それ相応の覚悟をした上でな。」
そんなものが選択の権利というのだろうか。
俺達の反応を見てか、課長が続けた。

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