巡回の隙間で俺と先輩は、自分のことや家族のこと、
学校のこと、会社のこと、趣味やスポーツについて、色んなことを話した。

先輩は35歳で、子どもが2人。小学校1年生の男の子と幼稚園の女の子だそうだ。
子ども達の話になると止め処なくしゃべり始める。
可愛くって仕方ないのだろう。
それに比べて奥さんのことはあまり話に出てこない。

会社に対する愚痴はそれほどでもなく、概して良い会社のようだ。
制服に着替えるときに先輩の裸をちらっと見たが、
昔から少林寺拳法で鍛えているらしくスリムな筋肉質って感じだった。

色んな話が盛り上がってる内に、先輩が一度巡回に行き、
もうすぐ俺が2回目の巡回に出る時間になった。
丑三つ時を過ぎ、午前の3時前で、一番眠くなる時間だ。
俺は屈伸運動をして眠気を飛ばすと、巡回に出発する。


6階の巡回をしているときだ。非常出口近くのテナントの部屋で物音がした。
「あれ?おかしいな。」
ドアのノブを回すと鍵が掛かっていない。
前の巡回の時にちゃんと掛かっていたから、何かおかしい。
俺は、懐中電灯で照らしながら注意深く中を覗いた。

ざっと見ただけでは変化は見られない。
緊張しながら中に入ってみた。
ドアを開けたまま、懐中電灯で部屋の中を照らそうとした時、
いきなり鳩尾に拳が食い込んだ。

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