俺は館林駿。
今年高校を卒業して、警備会社に就職した18歳だ。
1ヶ月間の講習と研修を終え、オフィスビル警備部に配属された。

今日が実務の初日で、先輩の三国さんと2人で夜間の警備を担当する。
現場は7階建てのこぢんまりしたオフィスビルで、
1階の裏玄関横に警備員室がある。

このオフィスビルは相当古いものらしく、
テレビカメラなどの集中管理システムは導入されていない。
警備員室は3畳程度の広さで、スチール机と書棚があるだけの味気ない空間だ。

衝立の奥にソファ兼仮眠用のベッドが置かれている。
キッチンは警備員室の隣で、トイレは1階フロア共用のものだ。

俺はクリーニングを下ろしたばかりの警備員の制服に身を包み、
背筋を伸ばして椅子に腰掛けていた。

 「そんなに緊張するなよ。もっとリラックスして、ほら。」
俺の姿を見て三国先輩が笑う。
 「朝まで長いんだからさ。どうせ、何も起こりゃしないんだ。」
「はい。」

俺は少し力を抜き、椅子の背もたれに重心を移す。
 「夜間の巡回は午後9時、午前12時、3時、5時の計4回だ。
 俺とおまえが交代で2回ずつ廻ろう。」
「え?でも先輩、巡回は2人1組で行う決まりじゃ。。。」
 「現場の運用ってやつさ。この10年間で一度も問題はないってんだからな。」
「そうなんすか。」
俺は割り切れないものを感じつつも、いきなり先輩に逆らうのもどうかと思うし。
とりあえず納得するしかないか。

張り切って仕事に臨もうとしていた矢先のことなので、
正直言って出鼻をくじかれた感はあるが、そんなものなのだろう。

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